センサーとAI(人工知能)、電動化技術の進展によって、小型の運搬機械、掃除機、自動運転車などさまざまなロボットが身の回りに浸透しつつあります。ただ、これまでのロボットは、移動に車輪を使うため、工場の床、廊下、道路の上といった具合に行動範囲が平面的な場所に限られていました。床にがれきなどが散乱した場所や、階段や舗装されていない道など、人であれば難なく歩ける場所でも稼働することができません。
この状況を打破した初めての商用ロボット(※1)が、米Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)の「Spot」です。4脚をもち、犬のように歩くことで、建設資材が散乱する工事現場、階段、山道、砂場など、人が歩ける場所ならほぼどこへでも行けます。さらに、14kgまでの荷物を運搬することが可能です。
ボストンダイナミクスが4脚歩行ロボットを商用品として実現できることを示したことで、ロボット利活用の空白地帯ともいうべきこの領域が一気に熱を帯びつつあります。既に、中国Unitree Roboticsが4脚歩行ロボを市場投入しており、スマートフォン大手の中国Xiaomiも開発者向けに4脚歩行ロボの提供を開始しています。今後、参入が相次ぐ可能性は高いといえるでしょう。
複雑な、この4脚歩行をいったいどのような機構で実現しているのか。どのようなセンサー、モーター、減速機が必要なのか。軽量化や剛性はどのように確保しているのか。Spotで改善すべき点はどこにあるのか。分解から、こうした疑問を明らかにしたのが本書です。Spotの流通量は少なく、まだ分解された書籍もないことから、世界に類を見ない(※1)、貴重な一冊です。
※1)日経クロステック調べ(2021年8月31日時点)
本体価格約820万円(※2)の製品をバラバラにし、その構造を徹底分析
※1)日経クロステック調べ(2021年8月31日時点)
※2)1米ドル=110円で計算
Spotは米Boston Dynamicsが開発し、2020年6月から一般に販売を開始した4脚歩行ロボットです。4脚を見事に動かし、平地はもちろんのこと、階段や岩場の上り下りが可能です。倒れたら自力で起き上がる機能も搭載。一度歩かせた道を自律歩行する機能も備えます。
重さはわずか31.7kg。605Whの電池で90分間稼働し、14kgまでの荷物を運ぶことができます。
本書では、実機を徹底分解・分析することで、
● どうやって操作するのか。
● カスタマイズは可能なのか。
● どう制御されているのか。
● どう動作するのか。
● どのような部品で、実現されているのか。
など、技術者なら誰でも興味を覚える点を明らかにします。
200点超の写真や図表を収録。視覚的に理解できる
メインコンピューター、脚部のドライブ機構、冷却機構、カメラ、電池パック、コントローラーなどについて、200点を超える画像や図表を掲載。機械工学の専門家の視点で、分かりやすく解説します。
分解・分析で見えてきた“4脚歩行に必要な4要素”を徹底解説
分解・分析を行うことで、4脚歩行のために必要な4つの要素
❶全体構造、❷歩行機構、❸制御、❹冷却 が見えてきました。
設計思想とともに、各所に施された工夫を解説します。
❶全体構造:
胴体の重さや歩行の際の衝撃で破壊が起きないよう、軽量、強固かつ柔軟な素材と構造を採用。
❷歩行機構:
コンパクトなモーター機構や、地面の凹凸にすばやく反応するための工夫。
❸制御:
必要最小限でありながら効果的にセンサーを配置。随所に高精度・高レスポンスで動ける工夫。
❹冷却:
高い計算能力を持つコンピューターと高速で動くモーターを冷やすための工夫。
機械エンジニアの視点でSpotの機構を詳細解説
Spotを一言で表現するなら、ハイエンドなパソコンと、4脚歩行の駆動機構が融合した製品です。そのため、歩行機構をどのように実現しているのかが、分析の肝となります。そこで、本書では、メカニカル分野のエキスパート、松田篤志氏に協力を仰ぎ、機構のみならず、運用・保守など、実際のエンジニアにしか分からない視点も盛り込みました。
執筆協力:エーエムクリエーション社長 松田篤志氏
ヤマハ発動機で無人ヘリコプター「RMAX」シリーズを開発。慶應義塾大学 電気自動車研究室で電気自動車を研究。
すべての電子パーツを基板、ICレベルで分析
電子部品は、スマートフォンや移動通信基地局など、さまざまな電子機器を分析してきたフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの協力を仰ぎ、徹底分析しました。
IC一つひとつを可能な限り調査、分析
●機能 ●ラベルや形状 ●部品メーカー ほか
細部の拡大画像で、分かりやすく表現
●筐体内での基板の搭載位置 ●接続方法 ●基板の層数 ほか
実地試験と分解調査で分かったSpotの弱点を解説
平地、斜面、積雪、水路等、特殊条件を想定した走行テストを実施し、 滑りやすい斜面、足元の障害物への対応、転倒からの復帰などを検証しました。 分解によってSpotは非常に洗練された構造や機構を持つことが分かりましたが、 実地試験の結果、改善点も見えてきました。2つの大きな課題、「防水防塵への弱さ」と、 「滑りに対する耐性のなさ」について解説します。
水没させたSpotから見えた防水対策の甘さを徹底解剖
水没直後の動作不能になったSpot各部を分解し、水の侵入状況を細部写真で検証。
● 各パーツを結ぶコネクターの選定は?
● シール方法は?
● メンテナンスを想定した、分解性、リペア対応は?
屋外、雨の中や沼地などの劣悪環境で走行可能にするための課題を明らかにします。
今回の分解を通じて、複雑な動作をするSpotが非常にシンプルな構造であることが分かりました。
一方で、本体のフレームや、駆動を司るモーターや制御基板を独自で設計するなど、非常に凝った作りであることも見えてきました。人とロボットが共生する時代はすぐそこです。
是非とも、本書を手に取り、今後必須となる技術を学んでいただければ幸いです。
編集責任者中道理
日経BP
日経クロステック副編集長、日経エレクトロニクス編集長
<経歴>『日経バイト』『日経コミュニケーション』『日経エレクトロニクス』で技術系専門記者として活動。2017年からオープンイノベーションを実践する『リアル開発会議』の編集長を務めた後、2020年1月より現職。「日産自動車『リーフ』徹底分解」シリーズや「テスラ『モデル3/モデルS』徹底分解」シリーズで主要メンバーとして分解・調査、編集・執筆、フォルクスワーゲンの電気自動車「ID.3」の分解・調査においても主導的な立場で関わり、日経クロステックの特集記事「VW本気のEV『ID.3』徹底分解」では記事を執筆したほか、責任者を務めた。
【収録内容】
●第1章「Spot概要」より「1-1. 全体像と諸元」
●第2章「ソフトウエア開発基盤」より「2-1. 全体像」
●第3章「動作モデル」より「3-1. 通常時動作」の一部
●第4章「全体構造」より「4-1-2. 全体構成」
●第5章「メカ部品」より「5-1-1. レッグドライブアセンブリ構成概要」の一部
●第6章「エレクトロニクス部品」より「6-1-1. 接続位置」
●第7章「ペイロード」より「7-1-1. 概略」
●本レポートの全目次
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