Q&Aサイト等に代表されるWeb 2.0時代の集合知ビジネスについて
株式会社オウケイウェイヴ 代表取締役社長 兼元 謙任 氏
株式会社オウケイウェイヴ
代表取締役社長
兼元 謙任 氏

情報の送り手と受け手との間で、自由なコミュニケーションが可能となるWeb 2.0の時代には、エンドユーザー 一人ひとりの発言力が増し、企業活動に大きな影響を及ぼすようになってくる。その時に企業は、自社に対するエンドユーザーのロイヤルティ(忠誠心)を高め、彼らのアイデアや知識を商品開発などに生かすための仕組み作りを考える必要がある。そこで有効となるのが、ユーザーの集合知を活用するためのQ&Aサイトだ。

クラウドソーシングを実現するQ&Aサイト

冒頭で兼元氏は、「クラウドソーシング(Crowd Sourcing)」と呼ばれる業務委託の新しい形態について言及した。このクラウドソーシングとは、不特定多数のクラウド(=群衆)を、自社の商品開発やユーザーサポートなどに取り込むというもので、特定の業務分野に強みを持つ外部企業に業務を委託する「アウトソーシング」と対比して考えれば、その特徴を理解しやすいだろう。最近では特に、ブロガーやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に参加しているユーザーを対象に行っている企業が見られる。忠誠心が高いクラウドなら、無償で業務支援をしてくれる場合もある。

しかしその一方で、“不特定多数”のクラウドを制御していくことは非常に困難だ。少しでも対応を誤れば、これまで自社の熱烈なファンだったユーザーが批判的な態度に急変する恐れも十分にある。

兼元氏は、「そこで我々はコミュニケーションの原点であるQ&Aに着目し、Q&Aサイトの活用を考えた。ブログやSNSの管理は非常に大変だが、質疑応答だけなら制御もしやすい」と語り、「Q&Aサイトは、困っている質問者に対して、知識やノウハウのある回答者が有益な情報を提供するためのコミュニティだ」と強調する。

こうした共通のコミュニティで行なわれるユーザー同士のリアルな質疑応答から、企業は商品開発やサービス改善、さらには売上アップのヒントを得ることができるのだ。

コミュニティの運営には、4つの要素が必要となる

続いて兼元氏は、「コミュニティは4つの要素で運営しなければならない」と語り、具体的な要素として、「雰囲気」「ルール」「規約」「システム」を挙げた。

例えば国立公園には管理者がいるが、きちんとした監視がされていなければ公園の雰囲気はどんどん悪くなり、利用者も減ってしまう。そうした意味で、「まずコミュニティの雰囲気は非常に重要」(兼元氏)だ。また「ルール」は、“こんなふうにしよう”という利用者間の暗黙の取り決めを指す。「規約」は、“決め事を守らない場合には退会や利用停止などに処する”といった規則、「システム」は、ルール違反や規約違反をそもそもできないようにする仕組みだ。コミュニティの運営には、この4つの要素のバランスが大きなカギを握ることになる。

さらに兼元氏は、「ネット上の情報が自然に整理されるというのは難しく、情報はやはり制御しなければならない」と指摘し、「しかしシステムでがんじがらめにすれば、ユーザーの利便性は低下し、運営コストも割高になる。そこで求められるのは、“ゆるやかな管理”だ」と強調する。

「我々は、雰囲気、ルール、規約、システムのバランスをどのように取ればいいか、また情報をどう制御していくか、ということに8年間取り組んできた」(兼元氏)。

Q&Aサイトの集合知を、ユーザーサポートやマーケティングなどに活用

1999年に設立されたオウケイウェイヴは、現在ポータル事業とソリューション事業を展開している。前者については、登録者数約80万人、月間利用者数約 700万人、Q&A総数1250万件、回答率99.2%のQ&A サイト「OKWave」を運営。後者については、国内160社以上の企業で利用されているFAQ管理ソフトウエア「OKWave Quick-A」等を提供している。

次に兼元氏は、Q&Aサイトをクラウドソーシングにどう活用するかという点について言及し、「Q&Aサイトの集合知を一番利用しやすかったのが、企業のサポートセンターだ」と語る。オウケイウェイヴでは、まず顧客とのやり取りの中からFAQ(Frequently Asked Question:よくある質問)とその回答を抽出し、サポートセンター内で閲覧できるようにした。そして、さらにそうした情報を随時更新し、顧客や社内のマーケティング部門、開発部門にまで提供することで、ユーザーサポートに加え、企画、開発、営業にまで利用できるようにしたのである。

画像
画面:上図のように、蓄積されたユーザー同士のFAQや回答をサポート部門に取り込んだ場合、幅広い問題により迅速に対応できるようになる。

現在、オウケイウェイヴでは、こうした仕組みを数多くの企業に提供している。それが「OKWave QA Partner」というCGM(Consumer Generated Media)サービスだ。これは「OKWave」サイトに蓄積された1200万件以上の質疑応答を企業にOEM(Original Equipment Manufacturing)提供するもので、現在41社のWebサイトにQ&Aコミュニティとして提供されている。

Q&Aサイトで多数のユーザーを巻き込んでいくことで、彼らの集合知をクラウドソーシングに利用することができる。その結果、商品開発やより満足度の高いユーザーサポートを実現することが可能となるのだ。さらにその先では、自社へのロイヤルティが高く、製品にも詳しい良質な回答者である“ネット・コンシェルジュ”が、自発的に自社を助けてくれるようになる。

「今後、企業がさらなる成長を実現するためには、これまでコストセンターだと位置付けてきたサポートセンターをプロフィットセンターに変えていかなければならない。そのためには“コンシェルジュ”を囲い込むことなどでサービスの向上を図るとともに、営業部門との連携を考えていくことも非常に重要だ」(兼元氏)。

このように兼元氏は、今後ユーザーの集合知をビジネスに活用することの重要性を説き、講演を締めくくった。

集合知のビジネスへの活用に対して、期待感が漂う会場。
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