|
来るべきユビキタス社会の到来に向け、人、モノ、場所が情報を発信する際のキーデバイスとして注目を集めるRFID(Radio Frequency Identification、無線ICタグ)。バーコードの置き換えというイメージが強いRFIDだが、官民を挙げてu-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)構想を推進する日本では、「安心・安全」をテーマに、さらに幅広い用途への活用が期待されている。小学生の登下校管理、食の安全等に寄与するトレーサビリティ、機密書類、パソコン等の資材管理など、既に様々な分野でRFIDの実用化が進んでいる。富士通のユビキタスシステム事業本部部長の吉田正氏に、富士通が提供するRFIDソリューションについて話をうかがった。
|


ユビキタスシステム事業本部ビジネス推進統括部 ユビキタスビジネス推進部部長 吉田 正 氏
|
RFIDとは、無線通信機能を有するIC タグを使って、人やモノ、場所を識別・管理する仕組みのこと。当初は、流通業界でバーコードに代わる商品の識別・管理技術として研究が進められてきた。「RFIDの特長は、バーコードに比べて格納できる情報量がはるかに多く、一つひとつのモノをきめ細かく管理できることです」と吉田氏は語る。
例えば、店頭に積み上げられた苺は一括して扱いがちだが、RFIDなら、1箱1箱の苺について、いつ誰が生産し、誰が出荷し、誰が取りまとめて市場に卸したのかといった履歴情報を、お客様に提供することが可能である。
最近では、商品の流通過程のみならず、ユビキタス社会の実現を支えるキーデバイスとして、さらに幅広い用途への活用が模索され、特に昨今の社会情勢を反映し、セキュリティ分野での活用にも注目が集まる(表)。
 |
ますます広がる セキュリティ分野での活用 |
 |
セキュリティ分野におけるRFIDの活用法の例としては「人、モノの位置探知」がある。人やモノの位置捕捉や動線記録などへの活用が考えられる。
人の位置を探知する活用事例として、実際に東京の立教小学校や埼玉県の浦和ルーテル学院で導入されている児童・生徒の登下校を管理するシステムがある。これは、通信距離の長いアクティブタイプのRFID タグを小学生のランドセルなどに装着し、校門付近にリーダーを設置して誰が、いつ、校門を出入りしたかを正確に記録すると同時に、保護者へリアルタイムにメールで知らせるというものだ。
「システム導入によって、保護者から子供が下校したかどうかを尋ねられても、校内放送を流したり、先生方が校内を探し回ったりするなどの負担は少なくなりました」と吉田氏は語る。
子どもが巻き込まれる事件や事故が多発する中、子どもの安全を確保する対策として今後ますます注目されることだろう。
また同システムの他の応用例としては、発電所など危険な場所への入退出管理や、店舗における店員の動線記録などがあり、多くの実証実験も行われている。
その他のRFIDの活用法としては「トレーサビリティ(追跡可能性)」がある。
トレーサビリティというと、BSE問題などで牛への活用が話題となったが、吉田氏によれば、「食の安全を守るという分野でRFIDは、豚への活用が進んでいます」という。これまで豚は、飼育する数がとても多いため、1頭ずつではなく、飼育している柵単位で餌や投薬の記録などを管理してきたが、RFID タグの導入によって1頭ずつ詳細に記録・管理できるようになった。
またトレーサビリティは、工業製品の製造工程管理にも大きな威力を発揮する。製造工程において、部品を組み込む度にその情報を追記していけば、完成したときには構成される部品の情報がすべて記録されていることになり、例えば特定の部品に不具合が出た場合など、不具合が出た部品のロットを速やかに特定できる。富士通では、このような製造工程管理システムを、既にあるメーカーの工場で構築した実績を有しており、「現在、自社の通信機器の製造工程でも導入検討中」(吉田氏)という。
 |
機密情報の流出防止にも有効 医療分野への活用も始まる |
 |
「e-文書法」の施行により、企業内でも書類の電子化が進んでいるが、土地の権利証書など電子化できない書類もまだ残っている。また、企業内には機密情報を記した書類も少なからず存在する。このような重要な書類を安全に保管するために、書類そのものや、書類を収めた袋やフォルダにRFIDを付けて管理しようという試みも動き始めた。また、機密情報だけではなく、食品物流において運搬用のプラスチックケースが3割近く返却されてこないため、「ケースにRFIDを付けて、どこの店から戻って来ないかを管理したいという相談も受けています」と吉田氏。
医療分野においても、患者や薬品等にRFIDを付け、カルテに記された内容と整合性を図ることによって、オペレーションミスを防ごうという実証実験が一部の医療機関などで始まっている。
 |
富士通ならではの総合力を駆使 最適なRFIDソリューション提供 |
 |
「RFIDの実用化は、山登りでいえば、まだ二合目か三合目。普及させていくためには、制度の策定や標準化の推進など、まだまだやることがたくさんあります」と語る吉田氏。そこで富士通では、5年先を見据えてRFIDの実用化に取り組んでいるという。例えば、同社では、剥がして別のモノに貼ろうとすると、書き込みができなくなる「電子封印」を開発。不正に対する対策などが検討されている。
RFID の活用に際して、実は、集められたID をどう処理し、活かすかというバックエンドのシステムがしっかりしていなければ、十分な効果は期待できない。つまり富士通ならではの総合力が必要だ。
「私たちの技術を使ってお客様のRFID活用システムをご一緒に具体化し、育てあげて行きたい」と吉田氏は抱負を語る。