(「日経レストラン」2007年12月号掲載)
平日の営業時間を10時から15時の昼間だけにしたのは、2006年から。父・隆男さんの体調が思わしくないことがあり、両親に無理をさせられないと考えて、客数の落ちていたディナー帯を思い切って捨てた。
減収覚悟の決断だったが、意外にも、売り上げはむしろ上向いた。旗振り作戦などの効果もあっただろうが、昼間の短い時間に気力と体力を集中して営業できるため、生産性が上がったようだ。家族全員が「人間らしい生活ができるようになった」と口を揃えるのを聞くたびに、省三さんは決心して良かったと感じている。
レジを締めて後片付けが終わるのは17時頃。省三さんは、その後の時間を、パソコンでダイレクトメール(DM)やチラシを作ったり、顧客情報を入力したり、また読書やインターネットで情報を収集する時間に充てている。
チラシは新聞折り込みも利用するが、自らポスティングもする。「旗を振ってるラーメン屋さん」として有名な省三さんの場合、日が暮れる前に歩けるメリットは大きい。「ラーメン屋さん!」と声をかけてもらえたり、「『このチラシだと、クーポンのサイズが大きすぎて財布に入らない』など、お客様に教えてもらえることも多い」のだ。
読書は、自己啓発やビジネス書が多い。タンメンを主力商品に据えたのは、大久保一彦さんの著書で、「メニューの『4番バッター』を決めることが、繁盛店への突破口だと教わったから」。
短時間集中営業は、「しょうや」の気力・体力・知力を養う、パワーの源泉なのだ。
「お前の店は、何屋なのか分からないんだよ」ー。
店を継ぐ前はプロの司会者として、ブライダル関係の仕事をしていたんですが、両親が経営する「しょうや」が不振で、ずっと心配していたんです。そして店を継ぐ決心をしたとき、親友の辛口のひと言が、店を生き返らせるきっかけになりました。
確かに、その頃の「しょうや」は、ラーメン、定食ともメニューが多過ぎた。友人の言葉にはショックを受けましたが、よく考えると、もっともな指摘だと思いました。
大久保一彦さんが言う「4番バッター」を知ったのも、その頃です。特徴があって、だから万人受けせず、他店がやりたがらない商品。しかも高価格なものではない。それが「4番バッター」。うちの場合、それはタンメンだと思いました。
そんな風に、新しい知識を得て、それを実行することで実際に店と自分が変わっていく─。それが楽しい。
だから、人と本への興味も尽きません。お客様の声にも敏感になります。お客様と交わす会話は、もちろん情報収集のためもあるけど、それだけじゃありません。お客様は、商品だけで店を選ぶわけではないと思うんです。仮に料理がまずくても、店の人間と交わす会話が楽しければ、また来てくれるもの。そんな魅力がある店になりたいと思っています。
両親にはいずれ、引退してもらって、楽をさせたい。それには早く月商300万円の安定軌道に乗せ、従業員を雇える状態にすること。その先の、「2店目」のイメージも温めています。
(横田省三さん 談)


