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養老孟司のデジタル昆虫記
プロフィール

日経BP社出版局にて単行本の編集を担当
養老孟司先生とは、10年近くお仕事をさせていただいており、国内はもとより、マレーシア・キャメロンハイランドまで採集旅行にお付き合いする編集者の鏡(養老先生いわく、「彼の場合、仕事にかこつけて遊んでいるだけだよ」)。
養老先生のムシの本『私の脳はなぜ蟲が好きか』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』を日経BP社より発行

柳瀬博一のタイ同行記

第2回 いよいよタイのジャングルで虫採り開始!?

市場で途中下車、そこで養老先生が買ったのは?

と、クルマは40キロほど走ったところで、わき道に入りました。しばらくすると、ロータリーのある小さな町に到着。タイのこうした町は、中心にロータリーがあって、放射状に道が伸び、道沿いにさまざまなお店が並んでいます。ちょっとした市場もあって、なかなかの繁盛ぶり。なんだか、ヨーロッパの古い町のよう。
お、養老先生が前のワゴンから降りてきました。
なんか買い物ですか?
「うん、棒をね、買おうかと」
 棒?
「そう、たたき網で木をたたくときに使う棒」

養老先生の虫の採り方。それは捕虫網をふりまわして、飛んでいるムシや木の高いところについている虫をとるのではないのです。
たたき網と呼ばれる、平べったい網を片手に持って、それを木や草むらの下におき、上の木の枝や草を棒でたたきます。すると、木や草についた虫が網の上に落ちる。落ちた虫をすばやく捕まえる、という次第。小さな虫を捕まえるには一番効率のいい採集方法なのです。

「ほら、日本で愛用していた棒があるでしょ。アフリカのマサイ族にもらったやつ。あれ、荷物になるから、持ってこなかったんだよね」

というわけで市場で適当な棒を買っていこう、ということになったわけです。長さだいたい80センチから1メートル、そこそこ持ち重りのする木の棒がいいそうです。みんなで市場を手分けして探すうちに、竹細工の店を発見。おお、長い竹の物干しが売っている。こいつを切ってもらったらどうだろう?

すると、養老先生、となりの雑貨屋さんでおばちゃんからなにやら金属の突起がついた棒を購入のご様子。
それ、いったい何につかう棒ですか?
「わかんない。でも、ほらこの金属の先、すぐ外れるでしょ。外せば、たたき網の棒にはちょうどいい」

もともと何につかう棒なのか、あとでわかります。

小さな村に到着。いよいよ虫取りか?

これで買い物はおしまい。クルマはさらに市場から奥地へと分け入りました。のんびりとした田園風景が左右に続きます。ゴムの木のプランテーションがあったり、道路わきを茶色の牛の群れが歩いていたり。いよいよ、タイの田舎に来た! という感じです。

クルマは、小さな村に到着しました。機織機で織物をしているおばあちゃん。赤茶けた未舗装路を走りまわる子供たち。あっちをいったりこっちにきたりする牛たち。家の軒先にはマンゴーやバナナがなっています。
「ラオ族の村ですよ」

林先生が教えてくれます。このラオ族のとあるおじさんが持っている林でムシ採りをさせてもらうのだとか。林先生は、何年も通い詰めて、ラオ族のひとたちと仲良くなり、虫採りのイロハを教え、いまでは毎年のように顔を出すそうです。
おじさんが出てきました。
いい味出しているおじさんです。手足が長く、いかにも敏捷そう。彼の案内で、いよいよ虫採りだっ

ラオ族の虫採りのガイドさん

と、養老先生、早くもラオ族のおうちの庭でたたき網を取り出し、庭木をたたき始めました。は、早い

「お」

養老先生の顔がみるみるほころんできました。
「いたいた、ゾウムシ」 
ゾウムシをとったときの養老先生の笑顔は、最高です。 金緑色の2センチほどのそれは美しいゾウムシですね。
「いやあ、いるねえ」
成田で「あんまり、採れないんじゃないですか」とそっけなかったときとは大違い。どうやら、けっこう期待できそうです。

タピオカの畑へ。

ラオ族のおじさんの先導で、クルマは農道をどんどん奥へと走っていきます。途中、牛追いつきの牛の群れを何度か追い越します。
景色が変わりました。周囲が田んぼから、畑になりました。見たこともない草が一面に生えています。細い葉が手のひらのようにひろがっている。
「タピオカの畑です」

ガイドのシュワリットさんが教えてくれました。
なるほど、これがタピオカなのか。
「この草の根がタピオカの原料になります」
葛みたいなもんですね。それにしてもなぜこの畑の前に?

と、ラオ族のおじさんはどんどん畑の奥に入っていきます。
畑に虫なんかいるのか?
と、おじさんは、やおらひとつの株を掘り起こし始めました。
いったい何が出てくるんだろう?

第1回
次回 第3回 に続く

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