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今後のコンテンツ配信はどうなるのだろうか。Jストリームの白石 清 氏は、「“マルチデバイス”“エンゲージメント”“リッチ化”の3つが重要な柱となります」と、語る。
「マルチデバイス」は、携帯電話をはじめ、PC以外にもネットへのアクセス方法が広がったことに関連している。これまでのユーザー想定では、「パソコンでのネット利用=20〜30代」「携帯利用=10代の若者」と考えられてきた。しかし、Jストリームが2006年に行った調査によれば、30代で50%以上、40代で約45%が、「携帯電話からのみネット接続する」または「主に携帯電話でネット接続する」と答えている。また、自宅からの接続が外出先からの接続を上回り60%近くいる(2006年11月ビデオリサーチインタラクティブ(WebPAC)調べ)。携帯電話は世代や場所を問わず、主要なインターネット端末になっているといえるだろう。これについて白石氏は、「多くの企業は携帯に対してノータッチですが、これでは3割から5割のユーザーを捨てることになります。今後は携帯向けコンテンツを重視すべきです」と語っている。JストリームではNTTドコモ向けの高画質動画やプッシュ型のiチャネルをはじめ、au、ソフトバンクの3キャリア対応で動画や携帯向けリッチコンテンツを数多く提供し、実績をあげている。
また、ネット利用者の年齢層の広がりも軽視できない。特に50代〜60代のネット利用者が増加しており、定年を迎えた団塊世代の利用者が目立って増えてきた。テキストを読み込まなくとも、動画コンテンツは見るだけで内容がわかる点がウケている。例えばPCでの事例では、大和証券グループのライブ配信がある。同グループでは、市況解説のほか、相場見通しや商品・サービスについて専門家が解説するライブ配信を行っているが、50代〜60代のユーザーにも高い評価を得ている。ベテラン世代に向けたコンテンツには、動画が有効であることの証拠だ。この傾向はPCだけにとどまらず、マルチデバイス化において共通のトレンドとなるだろう、と白石氏は予測する。
2008年のコンテンツで欠かせない2つ目の要素は「エンゲージメント」だ。エンゲージメントとは「絆」の意味だが、ビジネス、マーケティング視点では、コンテンツや広告メッセージを通じ、エンドユーザーが企業の商品やサービスに対してロイヤリティを抱き、自らが周囲へのブランド浸透などを働きかけること。
「企業サイトにおいて『エンゲージメント』を考えるならば、2つに集約されます。ひとつは、ネットの双方向性を生かし、企業からの一方向ではなく、企業とエンドユーザーの両方から情報発信が行われること。そしてもうひとつは、企業は、『場』や『きっかけ(話題、番組・コンテンツ)』を提供し、消費者の積極的な関与により一緒に『場』を盛り上げることで、ブランドや商品に対する心理的つながり・絆を深めていくことです」(白石氏)。
例えば、アデランスが今年の9月末日まで行っていた「ヘアシーダ 直電LIVE ディランに訊け!」では、音声認識の仕組みを使い、エンドユーザーが、PCサイト上に登場するお笑いタレントに電話をかけ、キーワードを発するとインタラクティブに様々なムービーが楽しめる。Webコンテンツをきっかけにユーザーに気軽に電話させ、コールセンターへの心理的敷居を下げる仕掛けだ。このコンテンツは、インターネットの内外でも大きな話題を集め、これまで接点を持つことのなかった新たなユーザー層へもアプローチすることができた。
また試行錯誤続くセカンドライフをはじめとするメタバース(3D仮想空間)だが、エンドユーザーがともに「場」を創り上げることができる仕組みがなければ、成功は難しいだろうと白石氏は指摘する。
「エンゲージメントの究極は、企業がWeb上にテレビ局を作ってしまうこと。私たちは、それを“企業放送局”と呼んでいます。さらに先を考えるなら、企業が、独自の3D仮想世界を作ってもいい。企業主宰のある種のコミュニティですね。自社の製品やサービスを共通項に集まってきた顧客のコミュニティを企業が提供する。モデルルームを作って、チャットで会話を楽しむ場があれば、ブランド体験を高めることができるでしょう」(白石氏)。
3つ目のキーワードは「リッチ化」だ。リッチ化と聞くと、動画やFlashなど派手なコンテンツを満載することだと勘違いしやすい。
「テレビは『集客メディア』で、CMでは15秒、30秒という限られた時間の中で、自社の製品をぱっと印象付ける。それに対してWebは、あるテーマなり、商品、サービスなどについて関心のある人に対して詳細を知ってもらったり、比較検討してもらうための十分な情報提供が可能な、いわば『説得メディア』なわけです。『詳細を知りたい』とサイトを訪れたユーザーに対して、満足のいくだけの情報提供でもてなす――リッチ化は、そのために有効な手法です」(白石氏)。
2007年10月にネットレイティングスは、新しいネットの利用行動指標として『総利用時間』を発表した。この背景には、Flash、Ajaxに代表されるRich Internet Application(RIA)技術を用いたWebサイトや、ストリーミング・コンテンツの普及がある。リッチ化により、ユーザーが1ページ内で長時間利用する傾向が高まり、従来からあるページビュー数だけではWebサイトの評価がしきれない、ということだ。「ネット総利用時間」の評価においては、動画サイトは上位に入ってきている。
「ブランディングをはじめ、最近の企業サイトでは滞在時間を延ばすことが非常に重視されています。そのための手段として、リッチ化は無視できない存在になっています」(白石氏)。
また、興味深い例としてオリックス・クレジットの「VIPローンカード」の申し込み画面がある。ローンカードの申し込みは職業や年収などの属性を詳しく書く必要があるため、面倒になって途中で止めてしまうユーザーも少なくない。 Flashを活用したこの入力フォームでは、案内役の女性が登場して、手順に従い1項目ずつ説明し、誤入力や入力漏れをチェックしてくれる。この入力フォームの導入で、同社では、カードの申し込み完了率が20%アップした。
この例を見れば、リッチ化は単なる「派手なコンテンツ」ではなく、ビジネスに直結する重要な要素だとわかるだろう。
現実世界の店舗の設計では、お客様の動線はスムーズか、商品が目に付きやすいか、スタッフの教育ができているかなどをチェックする。これと同じことをWebサイトでも考えるべきだ、というのが白石氏の持論だ。
「これまでの企業サイトでは、多くの場合、広告出稿やSEOなどアクセス数アップに集中してきました。せっかくサイトに集まったお客様をきちんとコンバージョンさせるためにも、次のステップとして、コンテンツ配信のことをきちんと考えないといけないと思います。Webサイト上で、いかにユーザーの満足度を高めるかという“Webホスピタリティ”の発想で考えるべきです」(白石氏)。
また、今後のコンテンツ配信に関する意外な盲点として、白石氏はこんな警鐘を鳴らす。
「テレビ同様、高画質・大容量化が進むネットですが、テレビとは異なりネットでのコンテンツ配信では、映像が途切れたり、最悪の場合には、集中アクセスでサーバーがダウンするということもあります。それは企業にとって、重大な機会損失です。企業の想いを“確実に”伝えるためには、企画、制作、配信、効果検証までをトータルな視点で捉える必要があります」。
最後に、注目の動画配信技術として今後の動向が気になるPtoPについて、2008年にはどんなことが起きると考えられるのか、聞いてみた。
「マスメディアやコンテンツ・プロバイダーなど多くのアクセスを集める事業者にとって、ネット動画展開の鍵を握るのがPtoPです。従来の動画配信はサーバーからのユーザーへの一対多の方式(CDN)でしたが、今ではPtoP技術により多対多での配信が可能になっています。JストリームでもBitTorrent DNAと提携することにより、従来までのCDNの安定性と、PtoPによる大容量化を組み合せた柔軟な動画配信方式を開発しました。これにより今までより低いコストで動画を配信できます。コストが下がれば、ネットの動画配信はさらに活発化するでしょう」(白石氏)。
Jストリーム 代表取締役社長 白石 清 氏が語る、2008年のネット動画・リッチコンテンツの動向予測は、ビデオによるインタビューでもご覧いただけます。
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