現場のIT化劇場 第3話

丈夫病院編 「ひやり」「はっと」が激減!医療の質を高めたモバイル端末の謎

厳しい病院淘汰の時代。地方の中堅病院「丈夫病院」は、IT化によって医療の効率化と安全の両立をはかる大改革を行った。はたして、その判断は吉と出た。医療の質が高まると、評判を聞きつけて看護師が集まるようになり、それによって質がさらに高まる、という好循環が生まれたのだ。患者にも看護師にも人気のIT化、その成功の秘訣は何か?
証言01 「患者さんに集中できる、働きがいのある環境が整っているんです。」丈夫病院 看護師 内陳恵子(ないちんけいこ)さん

IT化が看護師不足を解消するきっかけに

2006年4月の診療報酬の改定以来、例に違わず、「丈夫病院」も深刻な看護師不足に見舞われていた。IT化を決断したのは、少ない人員でも医療の質を高められるとの考えからだったが、結果は、予想を超える大成功だった。患者の評判が高まり、職場の雰囲気も明るくなると、看護師の募集がしやすくなったのだ。人員不足が解消された上、IT化で医療の効率化もはかられているので、患者の評判はますます高まってきている。

「患者さんへの応対に集中できるんです。」と笑う内陳さんも、この春、ほかの病院から移ってきた。「ここの看護師さんたちはみんな明るくてやさしいんだ」と患者さんも満足そうにしている。

内陳さんが以前勤めていた病院では激務が続き、患者に接する際に心のゆとりがなくなっている自分に気づいた。看護という仕事のやりがいを見失ってしまっていたのだという。その状況は、IT化を推進する前の丈夫病院と同じだ。看護師の離職率をなかなか下げられずにいた。

電子カルテと安全管理を融合

丈夫病院が導入したのはオーダリングシステムの発展系だ。電子カルテと安全管理が組み合わされ、医療ミスを予防する効果が高い。

内陳さんたち看護師がラウンドする際には、医療用カートを使う。カートには、無線LANで病院のサーバーにつながっているタフブック「CF-08」が搭載されている。そのCF-08には、バーコードリーダーがBluetoothでやはり無線接続されている。

医療行為を始める際には、まずバーコードリーダーで患者のリストバンドに印刷されたバーコードを読み取る。すると、CF-08にバーコードの情報が転送され、CF-08が院内のサーバーへ該当する患者の情報を取りに行く。そして、その患者に今、どういう処置を行えばいいかを表示するのだ。

これにより、患者の取り違えが防がれる。さらに、同じバーコードリーダーで、内陳さんは医薬品のバーコードも読み取り、その後で処置に入る。この患者に適用する医薬品に間違いがないか確認したのだ。もし間違っていれば警告が表示される。

「医薬品のパッケージが似ていたりすると、うっかり別の医薬品を手に取ってしまったりして、『ひやり』とすることがあるんです。バーコードで確認すればその点は安心なので、ストレスはずいぶん減りましたよ」

原価計算の導入も難しくない

患者に投与すべき医薬品は、医師がオーダリングシステムで指示する。そして、その投薬が正しく行われたかどうかも、内陳さんが行ったようにバーコードで照合した時点で記録されていく。投薬の記録が細かく残るので、医薬品にウイルスなどの汚染が確認された場合には、履歴をさかのぼってどの患者にどれだけ投与されたのかを瞬時に調べ、適切な処置を施せるのだ。

丈夫病院では、今回のIT化成功を受けて、さらなる経営の効率化も検討しているという。ここまでシステムが出来ていれば、医療版POSの導入もそう高いハードルではない。CF-08を通じて、投薬だけでなくすべての医療行為をリアルタイムで記録できる。それを原価計算する仕組みを整えれば、医師や看護師がコスト意識を持つことも可能になる、最先端のIT環境が実現されるのだ。

証言02 「インフォームドコンセント。これがわかりやすくなったと患者さんには評判です」丈夫病院 医師 赤髭太郎(あかひげたろう)さん

患者のもとへ医師がおもむく

医療用カートに車載されていたものと同じCF-08は丈夫病院に複数台導入されている。何にも固定せず、医師が自由に持ち歩いて電子カルテに記入する際や、患者にインフォームドコンセントを行う際などに利用している。特にインフォームドコンセントに関しては、オーダリングシステムと同時に導入されたクリニカルパスのおかげもあって、患者からわかりやすいと好評だ。

「どこへでもCF-08を持って行けるし、必要な情報をその場でサーバーから引き出せる。これは便利ですよ」というのは赤髭医師。CF-08を持って自ら患者の元へ出向き、レントゲン写真を見せながら、治療の経過を説明していた。患者はわざわざベッドから出て移動せずにすむし、目の前でレントゲン写真も見られる。「骨がキレイにつながっているのを見せてもらって安心しました」と、患者はほっとした様子だった。

また、赤髭医師はデスクではCF-30を使っているが、CF-08はネットワークを通じてこのCF-30へ接続し、遠隔操作することもできる。必要に応じて接続先をサーバーから自分のCF-30へ切り替え、個人的にスクラップしている医療情報などを閲覧できる点も、赤髭医師 にとっては大きなメリットだった。

情報漏えいの危険性が小さいシンクライアント

CF-08
CF-08はハードディスクを搭載しないシンクライアントだ。LAN経由でアプリケーションサーバーへ接続するほか、CF-30やCF-19など他のタフブックに直接無線接続して遠隔操作することも可能だ。

丈夫病院が新システムの端末として採用したCF-08は、実はパソコンではなく、シンクライアントだ。ハードディスクを搭載しておらず、無線LANを通じてサーバーのシステムに接続する。患者の個人情報などのデータもCF-08の中にはいっさい記憶されないため、医師や看護師が勝手にデータを持ち出すことは出来ないし、万が一CF-08を紛失しても情報漏えいの危険性は小さい。これは病院のリスク管理において非常に重要なポイントだ。

CF-08でもう一つ特徴的なのが、キーボードを搭載していない点だ。スタイラスを持って、タッチパネルになっているモニターに直接触れて操作する。「だからこうして立ったまま使えるわけですよ」と赤髭医師。「しかも画面が大きく高精細なので、患者さんにも見せやすいんです」

バッテリーで長時間駆動するので、電源の心配をせず、病室を回ることが出来る。「これを常に持ち歩いていれば、患者情報の伝達や、インシデントレポートなどを作成できる。その結果、連絡を忘れたり、タイミングがずれたりすることが本当に少なくなりました」


ゆとりの時間をスキルアップに活用

ITを全面導入するには予算の都合がつかず、まだ実現したいことが残っているという丈夫病院。しかし、CF-08という持ち運びがしやすく、誰にでもすぐに扱える端末を選んだことで、今後の展開の自由度も増している。たとえば、今は問診票を紙に書いてもらい、それを事務が電子カルテに転記する、というやり方をしているが「待合室で患者にCF-08を渡して、サーバーの問診票へ直接書き込んでもらう、ということも考えているんです」と赤髭医師。

とはいえ、現時点でも十分な効果が現れているのは事実だ。「医師も看護師も、今回のIT化のおかげで時間にゆとりが出来ました。私の課でも、研修の回数を増やしたり、認定看護師を目指す人が出てきたりと、全員のやる気がみなぎっているのを感じています」と赤髭医師。丈夫病院の医療の質は、これからもますます向上していくはずだ。

注.この物語は事実を参考にしたフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係ありません。
なお、「タフブックシリーズ」は、一般店頭では販売されていないため、より詳細なカタログの送付や法人購入の相談に関しては、松下電器の下記サービスにて受け付けている。