
目の前のルーティン業務を機械的にこなすだけなら、自分の仕事さえ見えていればいい。しかし、積極的に改善をしようとなると、他の部署の仕事も含めて考える必要が出てくる。
企業はそれぞれの部門が独立して機能しているわけではない。「横に連鎖が通って初めて価値を生み出せる。だから『バリューチェーン』というわけです」(遠藤氏)。縦割りではなく、全体最適の中で仕事ができる環境を整えるのも、現場力を鍛えるには必要なことだ。
しかし、これが実に難しい。そもそも組織とは機能分化し、役割分担をするために作られるものだ。ところが役割分担をすると、その組織図にとらわれて、知らぬ間に他の部門に対して遠慮するようになり、バリューチェーンが途切れてしまう。
したがって、皆が互いに意識してつながろうと努力する必要がある。「有効な対策のひとつに、他の部門を『見える化』するという方法があります」(遠藤氏)。ほかの部門の様子がわかれば「自分たちの仕事もこう変えるべきだ」「この情報は向こうに伝えておいた方がいい」といった、全体最適の考え方ができるようになる。

■あらゆる組織には自然と壁ができる。それぞれがつながる努力をしなければ、効果的な改善は不可能だ

部門をまたがった「見える化」には、ITが極めて有効だと遠藤氏はいう。「常に他の部門の情報を把握しておく必要はないかもしれません。しかし、必要なとき互いにすぐつながれるよう、インフラは整えておくべきです」(遠藤氏)。
多くの現場は他の部門の情報が見えていないままで判断することに慣らされているが、それで正しい判断ができるはずがない。自分たちの憶測が間違っていたことに、後から気づくケースも少なくないだろう。互いの情報が見える環境を整えておけば、こうした判断の一つひとつの品質が良くなる。
ただし、ITによる「見える化」には失敗例も多いと遠藤氏は指摘する。重要なのは、人間と人間がつながることが目的であって、ITはあくまでそれを補完するための道具にすぎないということだ。それを忘れてITありきの考え方に陥ってしまうのが、失敗の典型的な要因だ。
プラットフォームとしてITが必要なのは間違いないが、場合によっては、ITを介さずそれぞれの職場に足を運んで、フェース・トゥ・フェースで話す方が有効な場合もあるだろう。現物を見て、現実に対面して初めてわかることも多い。リアルのつながりがあると、ITもさらに生きる。「『こういう風に仕事をしている』という様子がわかっていれば、パソコンの中の情報も単なる記号ではなく、臨場感を持って感じられるのです」(遠藤氏)。